スーザン・ボイル デビューアルバム 夢やぶれて

デビューアルバム「夢やぶれて」の全曲

1 ワイルド・ホース
ミック・ジャガーとキース・リチャードが共作したローリング・ストーンズのカヴァーという意表を突く選曲は、サプライズ。

ストーンズ版は、かれらが設立したローリング・ストーンズ・レコードの第1作となったアルバム「スティッキー・フィンガーズ」に初収録されました。アレサ・フランクリンらで知られる米R&Bのメッカであるマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオで69年12月にわずか3日間でレコーディングされた曲。
約40年前の名曲の内省的なテーマを濃縮させたようなスーザンの表現力に魅了されます。

スーザン本人は「ワイルド・ホース」を自伝みたいなものと。そして最初の節は母が自分に話しかけているみたいで力強いと言っています。


2 夢やぶれて
ミュージカル「レ・ミゼラブル」のナンバー。同ミュージカルは、国内の上演を経て、「キャッツ」「オペラ座の怪人」で有名なプロデューサー、キャメロン・マッキントッシュ、英語詞のハーバード・クレッツマーらが新たに加わってインターナショナル版が練られ、85年にロンドン、87年に米日で初演されるや記録的なロングランとなり、世界中で上演されました。

第一幕で薄幸の女性フォンテーヌが自らの不幸を嘆いて歌うこの悲痛な曲は、ロンドン初演ではミュージカルの大女優パティ・ルポンが歌いました。
また、スーザンが尊敬するエレイン・ペイジの持ち歌としても有名です。
スーザンは冒頭の部分をカットして、メロディー部分から歌っています。


3 クライ・ミー・ア・リヴァー
愛の恨み節ともいうべき究極の名曲をスーザンは見事に歌い込んでいるのが印象てきです。
ジュリー・ロンドンの名唱で知られるスタンダードがオリジナルです。

オーディションに先がける10年前に、スーザンが1000枚限定でリリースされたチャリティCD用に録音したことでも有名です。
同CDにプレミアがついたには有名なエピソードです。


4 偉大なるかな神(輝く日を仰ぐとき)
ケルト系のトラディショナル・ソングに通じる心が洗われるような名曲ですが、ルーツは1885年にカール・ボーベルグが書いたスウェーデン語の詩で、メロディはスウェーデンのフォークソングを取り入れています。地理的に近いケルトとの接点があるのかもしれません。
その詩がドイツ語、そのドイツ詩がロシア語などに翻訳されて各国に広まり、1925年になってアメリカで初めて出版されました。

スーザンが取り上げるのはイギリス人宣教師スチュアート・K・ハインによる1949年の英語ヴァージョンで、これが現在では世界的に有名な讃美歌として定着しています。
英BBCが選出した讃美歌では、「アメイジング・グレイス」につづいて 2位にランクしました。


5 愛をこえて(ユール・シー)
80年代から現在までスーパースターとして君臨中のマドンナの作品。
彼女のバラード作品中非常に人気のある曲です。様々なスタイルを持つマドンナは、ヒット・ポテンシャルへのアンテナ的感覚も鋭く、大胆なセクシー路線に挑戦した「エロティカ」のセールス的な低迷を打破するために、清楚なイメージの「ベッドタイム・ストーリーズ」でイメージチェンジに成功。
その延長線上で発表した「ベスト・オブ・マドンナ」に新曲の一つとして録音したのがこの曲です。

スーザンのヴァージョンはヨーロッパ的なクラシック・テイストのオーケストレーションをバックに、ドラマティックに歌い上げるという独特のスタイル。
スパニッシュ・ギターがアクセントになっています。


6 デイドリーム・ビリーバー
日本では忌野清志郎がヴォーカルを務め発表し、様々なメディアで話題になったのは記憶に新しい。
アーティストの加工によっていろいろと変化するポップス・ソングの典型で、スーザンもポップな躍動感を抑えて、ピアノをバックにしっとりと歌いかけています。

オリジナルはテレビと音楽をリンクさせて大成功した人気アイドル・グループ、モンキーズが放った3曲目の全米NO1ヒットです。


7 アップ・トゥ・ザ・マウンテン
コンテンポラリー・フォーク系の歌姫パティ・グリフィンが書き、自ら歌ったスピリチュアルな名曲のカヴァーです。
ブルースやゴスペルの要素もある曲なので、清潔感のあるスーザンのヴォーカルと合うのかなと思いましたが実際に聴いてみると、感情を高揚させるようなグル―ヴ感覚たっぷり熱唱。

8 アメイジング・グレイス
ポップスとクラシカル・クロスオーバーの両面性を意識したこのアルバムの音楽コンセプトの中で、この曲は後者を代弁する選曲です。
ポール・ポッツやサラ・ブライトマン、イル・ディーヴォらアーティストが必ず取り上げる作品を、スーザンはとってもセンシティブかつスピリチュアルに歌いかけています。
「癒しのアメイジング・グレイス」と言えるでしょう。


9 フー・アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ビー
唯一のオリジナルソング。後の「この世の果てまで」にリンクする甘美なポップ・テイストをベースにミュージカル・ナンバーやゴスペルのアクセントを加えた曲調ですが、これまでの人生を振り返りながら、さらに前に進んでいく彼女自身を投影したような内容は、思わず涙が出てしまうほど感動的。

彼女自身の詞ではありませんが、ドラマティックなスーザンの人生やサクセス・ストーリーを意識して書かれたと思われます。


10 プラウド
クラシカルな讃美歌とリンクするスピリチュアル・ソング。
ピアノをバックにスーザンがしんみり歌う曲ですが、中盤で薄くオーケストレーションを挿入するという演出もあり、キャラクターにピッタリの内容に仕上がっています。

このアルバムのプロデューサーであるスティーヴ・マックと、ソングライターとして知られるウェイン・ヘルター、セリーヌ・ディオンなどのヒットメーカーとして知られる大ベテランのアンディ・ヒルという、新旧のヒットメーカーが共作した曲で、レコーディング・アーティストはスーザンが第1号となります。
今後スタンダードになる可能性を秘めた名曲だと思います。


11 この世の果てまで(ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド)
60年代を代表する典型的なポップ・チューンを、スーザン・スタイルの表現で真摯に歌い込んでいます
オリジナルはカントリー・ポップ系のシンガー、スキーター・デイヴィスが62年に全米2位になったヒットソング。スキーターの他にブレンダー・リーやカーペンターズなど数多くのアーティストがレコーディングしていますが、オトメチックな歌詞のためか、女性シンガーにお似合いの曲です。

弾き語り風のギターをバックにしんみり歌いかけるスーザンのヴォーカルも初々しい。


12 きよしこの夜
クリスマス・ソングにはかかせない曲です。世界中のだれもが知っているクリスマス・ソングの定番です。1818年に教会のオルガン奏者だったフランツ・グル―バーがジョセフ・モーアの詩に曲を付けて以来、オールタイムの人気を誇る曲です。
クロスオーバー系のアーティストもレコーディングしています。

ここではプロデューサーのスティーヴが前衛的なシンセサイザーを駆使してスペシャルな内容に仕上げました。スーザンをサポートする荘厳なゴスペル・クワイアの効果もプラス要因。


13 翼をください
日本盤のボーナス・トラックとして収録され、テレビで初解禁されるなど発売前から大きな話題になった曲です。悲痛な悲しみをテーマにした「夢やぶれて」とは対照的な未来に向けた夢と希望を感じさせる曲だけに、スーザンの澄んだ歌声は希望を抱かせてくれます。

日本のフォーク・グループ赤い鳥がシングル「竹田の子守唄」のカップリング・ソングとして発表後、オールタイムの人気を誇り様々なシンガーが取り上げてきました。
学校の教科書で合唱曲として紹介されたり、サッカーの応援歌になるなど、時代の節々で希望を与えてくれた名曲です。


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