オペラの魅力と歴史
オペラの魅力と歴史と仕組み
ヨーロッパを旅すると、ある程度名の知れた街ならば、必ずといっていいほどその中心に立派な歌劇場が建っています。夕闇が迫り、劇場のシャンデリアに灯がともると、着飾った紳士淑女たちが連れだって、その煌めく光のなかに吸い込まれていきます。
オペラの誕生から400年を経た今も、歌劇場は華やかな社交の場であり、時には密会の場にもなっています。世間がどんな状況であっても、重厚な扉を開ければそこは別世界。
禁断の大恋愛や宇宙規模の英雄伝、冒険物語などが待ち受けています。
歌劇場は日常と夢の世界を隔てるシェルターの役目をはたしているのです。
オペラは誕生した時から権力者の厚い庇護を受けて成長してきました。
1600年頃、フィレンツェのバルディ伯のサロンに文化人たちが集まり、音楽とドラマが融合した革新的な芸術を誕生させました。そして実際に上演され、楽譜が残る最古のオペラは、大富豪メディチ家の姫とアンリ4世の結婚式で上演された「エウリディーチェ」だといわれています。
以降、王侯貴族や大富豪がパトロンとなり、贅を尽くした歌劇場が建設されました。(写真はメトロポリタン歌劇場)
音楽だけでなくスペクタクルな装置も開発され、絢爛豪華な舞台が人々の目を楽しませました。
この新しい芸術は大流行し、イタリアからドイツ、フランスへ。
また、ロシア、イギリス、アメリカなど世界各地に波及し、その国の文化と融合した独自の様式によるオペラが生まれました。
作曲家では近年オペラの祖といわれるモンテヴェルディを始め、グルック、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ロッシーニやドニゼッティ、ベッリーニなどが活躍しました。
1831年にイタリアとドイツにオペラの二大巨匠、ヴェルディとワーグナーが生まれました。さらにヴェルディの後継者としてプッチーニが活躍し、19世紀中ごろにオペラは最盛期を迎え、大衆の間にも浸透して娯楽の王様の地位を確立しました。
悲劇的な大恋愛や歴史ドラマなどに加え、喜劇的な内容のオペラも生まれました。
またロマンチックなラヴコメディ、オペレッタが誕生します。それはイギリスを経てアメリカに渡り、ミュージカルへと発展していくことになります。
オペラの仕組み
「オペラは総合芸術である」と主張したのは、ワーグナーでした。自ら台本を書き舞台の演出も行い、崇高な理想世界を具現化した「楽劇」の上演に情熱を傾けました。
オペラ誕生の時点から音楽とドラマの融合を目指しており、物語が重要なカギとなります。
初期にはギリシャ悲劇や神話が題材となり、モーツァルトの時代には当時流行した芝居や後には、シェイクスピアなど文豪作品がオペラ化されました。
音楽は感情が高まったときに、新庄を吐露する「アリア」部分と、ドラマの流れや状況を説明する「レチタティーヴォ」から成ります。
通常は3幕構成が多く、休憩を入れると、たいてい上演には3時間以上を要します。
1幕のオペラがある一方、すべて上演するには4日4晩、20時間を要する壮大なスケールを持ったワーグナーの超大作もあります。
音楽を受け持つ指揮者は、歌手、オーケストラ、合唱、バレエ団など音楽部門を監督。
また演出家はドラマのコンセプトを決め、舞台美術や衣装、照明などを監督します。
1つのオペラを上演するためには500人以上の人たちが関わります。まさに贅沢な芸術です。
オペラは数百年の時を超え、音楽と演劇と美術が密接に融合した至高の芸術であり、極上のエンターテインメントです。
歌劇場は「目覚めて見る夢」と定義したのは、パリ・オペラ座を設計したガルニエでした。
その扉を開け、劇場空間に身をひたして、目と耳の感覚を全開すれば、必ず至福の瞬間を味わうことができるのです。